超スローペースでやっている統計学基礎です。いつになったら終わるかもわかっていません。果たして生きているうちに終わるのか...?
今回は対応がある場合の2標本検定についてです。
検定の流れ
一旦検定の流れをおさらいしておきましょう。
- 仮説を立てる
- 有意水準を設定する
- 適切な検定統計量を決める
- 棄却ルールを決める
- 検定統計量をもとに結論を出す
対応がある場合の2標本t検定
例題
新薬のテストを行う。被験者5人に対して投与前と後の血圧を測定した。この時の差(投与前 - 投与後)の平均は、投与前の血圧の平均は、投与後の血圧の平均は、差の不偏分散は212.5だった。投与によって血圧は下がったといえるか?
解説
投与前後で血圧が10も下がっているのだから、主観的には下がっているのでは?と思うのですが果たしてどうでしょうか?
対応のある場合の2標本検定ですが、前々回あたりに式を見てもらったかと思います。
この式を使います。
とはいえ、ひとまず順にやっていきましょう。
1 仮説を立てる
:投与前後の血圧は等しい。つまり、投薬によって血圧は下がらなかった。
:投薬によって投与前後の血圧に差があった。つまり、投薬によって血圧は下がった。
は手順3ででてきます。
2 有意水準を設定する
今回は信頼区間で仮説検定を行います。ということで、有意水準はです。
3 適切な検定統計量を決める
検定を行います。は差の母平均、はサンプルサイズ、は差の不偏分散です。
4 棄却ルールを決める
自由度はの分布です。
また、血圧が下がったかどうかについてだけ調べるため、片側検定を行います。
(仮に血圧が上がったかもしくは下がったかを調べたい場合は両側検定になります。)
よって、有意水準のの値は
と求めることができました。
5 検定統計量をもとに結論を出す
投与前の血圧から投与後の血圧の差の平均は、10です。
また、帰無仮説が正しいかどうかを調べるため、差の母平均は0になります。よって、
となり、値はおおよそ1.53と分かりました。
この値と有意水準のの値を図にすると、以下のようになります。拡大した図を使用しているのは、視覚的に理解しやすいためです。
帰無仮説を棄却する場合、値が有意水準のの値よりも大きい必要があります(もしくは値の確率が有意水準の値よりも小さい)。
しかし、今回は有意水準の値が値よりも大きいため、帰無仮説は棄却されません。
つまり、投薬によって血圧が下がっとはいえません。
まとめ
対応がある場合の2標本t検定について、例題を通して見てきました。主観では投薬によって血圧は下がっているという判断でしたが、統計学的には投薬によって血圧が下がったとはいえないということが言えました。
つまり、投薬前後で血圧が10下がるのは薬など関係なく、偶然の範囲内と言えそうです。
用語 | 意味 |
---|---|
2標本検定 | 2つの独立した母集団があり、それぞれの母集団から抽出した標本の平均に差があるかどうかを検定 |
対応がある場合の2標本分布式 |