とあるお兄さんの雑記

基本的に技術系の内容を書きますが、何を書くかは私の気分です。

統計学基礎vol.12~期待値とその性質~

今回の記事は期待値とその性質です。

期待値

1回の試行に対して期待される値のことです。期待値は E[ X ]と表します。場合によっては、 \overline{X} \muと書かれていたりもしますが、同じ意味です。

平均値と一緒にされがちですが意味が少し違います。平均値は観測されたすべてのデータを足してデータの総数で割った値を意味します。

例えば、サイコロの期待値はというと、 {1, 2, 3, 4, 5, 6}の目があり、それぞれが\displaystyle \frac{1}{6}の確率で出るため、計算すると

 \displaystyle \frac{7}{2} = 3.5

が得られます。

一方、サイコロを10回投げたときの出た目が 1, 1, 3, 4, 5, 4, 3, 2, 6, 3の時、計算すると、

 \displaystyle \frac{1 + 1+ 3 + 4 + 5 + 4 + 3 + 2 + 6 +3}{10} = 3.2

となります。もちろん、試行回数(サイコロを投げる回数)を増やせば期待値に近くはなります。しかし、あくまで観測されたデータに対して計算した結果であることを忘れないようにしてください。

期待値の求め方:離散型

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期待値の求め方:連続型

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期待値の性質

  1.  E[C] = C

  2.  E[ X + C ] = E[X ] + E[C] = E[X ] + C

  3.  E[k X] = kE[X]

  4.  E[X + Y ] = E[X] + E[Y]

順に見てみましょう。

性質1  E[C] = C

1は定数の期待値はその定数という意味です。

例えば、ある試行を1回行なうと、必ずある期待値が得られるようなものです。「犬も歩けば棒にあたる」みたいな感じですかね(ちがうかも....)。ひとまず、ある原因が起これば必ずある結果が起こるというイメージです。

性質2  E[ X + C ] = E[X ] + C

2はある確率変数に定数 Cを足した期待値は、もともとの期待値に定数 Cを足し合わせた結果と一緒という意味です。

サイコロを例に考えてみましょう。一般的にサイコロの期待値は 3.5になります。これに定数1を足し合わせた値を考えてみます。 つまり、 \{1, 2, 3, 4, 5, 6\}の各目に1を足すので、 \{2, 3, 4, 5, 6,7\}となります。これの期待値は、離散型の期待値の式から

\displaystyle E[X + 1] =2\times\frac{1}{6} + 3\times\frac{1}{6} + \dots + 7\times\frac{1}{6}

 \displaystyle =\frac{27}{6} = \frac{9}{2}

となります。

一方、期待値の性質2から計算すると

 \displaystyle E[X + 1] = E[X ] + 1

 \displaystyle = 1\times\frac{1}{6} + 2\times\frac{1}{6} + \dots + 6\times\frac{1}{6} + 1

 \displaystyle = \frac{21}{6} + 1 = \frac{27}{6} = \frac{9}{2}

となり、先ほどの計算結果と一緒になることが分かりました。

性質3  E[k X] = kE[X]

3は、ある確率変数に定数倍をかけた期待値は、元の期待値に定数倍したものに等しいという意味です。

これもサイコロを例に考えてみましょう。各目を4倍した目 \{4, 8, 12, 16, 20, 24\}の期待値を考えます。離散型の期待値の式から

\displaystyle E[4\times X] =4\times\frac{1}{6} +8\times\frac{1}{6} + \dots + 24\times\frac{1}{6}

 \displaystyle = \frac{84}{6} = 14

となります。

一方、期待値の性質3から計算すると

\displaystyle E[4\times X] = 4\times E[X]

 \displaystyle =  4 \times \frac{21}{6} = \frac{84}{6} = 14

となり、先ほどの計算結果と一緒になりましたね。

性質4  E[X + Y ] = E[X] + E[Y]

4はある確率変数同士を足し合わせたものの期待値は、もともとの確率変数同士の期待値同士の足し算に等しいということを表しています。

例によって、サイコロを用いて4について調べてみます。サイコロ単体の期待値は今までの結果から

 \displaystyle E[X] = \frac{21}{6} = \frac{7}{2}

となることが分かりました。ここで、サイコロが2つあり、一方を X、もう一方を Yとします。

これらを足し合わせた期待値を考えると、

 \displaystyle E[X + Y] = (1+1)\times \frac{1}{6} + (2+2)\times \frac{1}{6} + \dots + (6+6)\times \frac{1}{6}

 \displaystyle = 2\times \frac{1}{6} + 4\times \frac{1}{6} + \dots + 12\times \frac{1}{6}

 \displaystyle = \frac{42}{6} = 7

です。

また、これらの期待値はそれぞれ、

 \displaystyle E[X] = \frac{7}{2}

 \displaystyle E[Y] = \frac{7}{2}

です。そのため、性質4を使うと、

 E[X + Y] = E[X] + E[Y]

 \displaystyle = \frac{7}{2} + \frac{7}{2} = 7

となります。性質4が成り立つことが分かりましたね。

まとめ

今日は、期待値とその性質についてまとめました。結構重要な部分になりますので、しっかり理解しておきましょう。

以下、まとめです。

用語 意味
期待値 1回の試行に対して期待される値のこと
平均値 観測されたすべてのデータを足してデータの総数で
割った値
期待値の性質1  E[C] = C
期待値の性質2  E[ X + C ] = E[X ] + C
期待値の性質3  E[k X] = kE[X]
期待値の性質4  E[X + Y ] = E[X] + E[Y]