2019/06/17
2019年6月17日 朝方。
いつもは日課のお茶を淹れるために早めに起きる祖父は、起き上がろうともせずただ目を覚ましていたそうです。
祖母とはっきり会話をしながら。
それから、朝ご飯の準備をしに祖母が台所へ行き、再び寝室に戻ってきたとき、祖父は痙攣をおこしていたそうで、何度声をかけても応える気配がありませんでした。
気が動転してしまった祖母は、私の母に電話をします。母も「すぐに行くから」とその場では電話を切りましたが、時間が朝方だったこともありさすがにおかしいと思ったそうです。
そこで電話をかけ直し、祖母に救急車を呼ぶように伝え、祖父母と一緒に暮らしている母の兄にも連絡し、すぐに家に帰るようにといいました(この時、母の兄は畑仕事に出かけていたようです)。
ここまでが、何度も母から聞かされた話です。詳しく言えばもう少し続くのですが、あまりそのあたりの話をしてくれなかったこと、私自身も断片的にしか覚えていない状態のためここで終わります。
場面が変わって。
当時福岡に住んでいた私は友人と20時近くになるまで話をしていました。何気ない話です。特に私は、直前に内定が出ていたこともあり浮かれていました。そんな19時40分ごろ、母から連絡が来ます。「祖父が危篤だから戻って来れないか」と。福岡から宮崎。帰れないことはありませんが、時間も時間で、すぐに帰ることは難しい状況でした。
もちろん、急げば深夜バスに間に合うのですが、宮崎に着くのはどうやら次の日の午後。始発の電車に乗り、新幹線で帰った方がまだ速いと考え、次の日の始発で帰ることにしました。
その夜はいろいろなことを考えてしまったため、眠れませんでした。最終的に始発に乗り遅れるくらいなら始発まで起きていようと考え、一睡もしませんでした。
そうやって早朝、準備した物をまとめすぐに家を出て、最寄りの駅まで向かいました。
伝えなきゃと。内定もらったよ、と。
私はもともと、聞かれるまで答えないという性格でした。そのため、内定が出たことも聞かれるまでは答えないでおこうとバカな考えを持っていました。
いや、ほんとにバカでした。叶うならそんな性格になってしまった瞬間の私を殴りたいぐらい。
ひとまず、内定出たよと、一言伝えたい一心で駅に向かい、始発に乗り込みました。
そして、母に始発に乗ったからとメールを送るとすぐに返事が返ってきました。
「じいちゃんはだめでした。」
もちろんこの一言だけではなく、ほかにも書かれていたのですが、これしか覚えていませんでした。
あぁ、間に合わなかったんだと。
叶うなら、病室で横になっていて目を開けることが出来なくてもいいから、まだ生きている祖父に伝えたかったです。
何をそこまでと思われるかもしれません。
たかが就活で。
たかが祖父が亡くなったぐらいで。
たしかにそうかもしれません。でも、私にとっては大事な人でした。小さい頃からよく面倒を見てもらいました。いろんなことを教えてもらいました。
そんな大事な人に、一番重要なことを伝えることが出来ませんでした。
そして、何がこんなに悔しいのかといえば、私の内定が出たのが5月31日だったことです。
祖父が亡くなるまで3週間近くあります。
その間に1度でもいいから電話して伝えるべきでした。
それなのに伝えませんでした。
そして、もう二度と生きている祖父に伝えることが出来なくなりました。
2019/06/19
次に祖父に会ったとき、祖父は棺の中にいました。
こちらから声をかけても何も返ってきません。
しかし、それ以前に声をかけることさえできませんでした。
今になってみれば、死んでしまった事実を受け入れるのが嫌だったんだろうなと思います。
棺の中にいる祖父には絶対に声をかけようと思っていました。
というのも、祖父は10年ほど前に心臓の手術を受けていました。手術は終わりましたが、危険な状態だったため、ICU(集中治療室)にいることになりました。その時、家族でお見舞いに行ったのですが、体の周りにいろいろな医療器具を付けた祖父を見て恐怖を覚え、声をかけることが出来ませんでした。そして、ろくに声をかけずにICUを出てしまいました。一生懸命、涙を流しながらも、私に声をかけようとしてくれた祖父に対して。
あの日声をかけることもできずに逃げてしまった私は、今回こそはと思いました。
何か声をかけなきゃと。
あの日のようにはならないようにと。
しかし、できませんでした。
声をかけることもできず、ただ遠目で祖父を見つめることしかできず、何も私は成長していませんでした。
そして、火葬場に入れらる直前に棺の中の祖父に触れました。
あぁ、こんなにも冷たいのかと。
率直に思いました。亡くなった人はこんなにも冷たくなってしまうのかと。
ぬくもりなんて感じることもできませんでした。
そんな祖父にやっと出てきた言葉は
「ありがとうございました。」
思いを伝えるには
初めから言ってしまえば、内定が出たその日に家族に知らせればここまで引きずることはなかったでしょう。
ましてや、聞かれるまで答えないという性格もどうかしています。馬鹿かよと思います。
まぁそれは置いといて。
タイトルの通り、亡き人にどうやって思いを伝えればいいのでしょうか?
ここでは、仮に幽霊がいるという話のもと考えてみたいと思います。
(皆さんは幽霊はいると思いますか。わたしはいると思います。テレビの特集でやっているのを見て「怖っ!」とかなる人です。別にいいじゃないですか、怖いものは怖いのですから。
ちなみに、私は高校生のとき、理数科という学科に所属していました。そこで「幽霊が怖い」という話をしたとき、散々クラスメイトに馬鹿にされました。
「え、信じてるの?www理数科の中で一番信じなさそうなのに?wwww」と。1日、2日ぐらい馬鹿にされてました。)
霊媒師に頼る
霊媒師などに頼んで憑依させ、思いを伝えるという方法もあるかと思います(この辺の分野に関して全く知識がなく、適当に霊媒師と言っています。ひとまず、ここで霊媒師といった場合、死者と人間の間を取りなす人と定義します)。
ですが、その憑依した人は本当にあなたが呼んでほしいと思った人でしょうか。このような類は証明しようがないように思えます。要は客観的な判断に欠けます(別に否定しているわけではありませんが、肯定する気もありません)。
霊感を身に付ける
他の方法としては自分自身が霊を見る能力を身に付けるとかでしょうか。そうすれば、降霊術などで会いたい人に会うことが出来るでしょうし、人を介さずに直接話すことが出来るので本人かどうかの判断もできるでしょう。
しかし、この方法は長い年月を費やしそうですし、そもそも先天的な才能のような気がします。まれに霊感が強い人がいますが、彼らも彼らで我々には分からない苦労をしているのではないでしょうか。
ITの力を活用
私の場合IT系の仕事に就いていますので、亡き人に思いを伝えることを何とかできないものかとも考えたりします。しかし、実現は難しそうです。誰かすごい人が開発してくれればいいですが。
今は、デジタルな社会になり昔はできなかったことが今では簡単にできる時代にもなりました。
そのため、遺品をデジタルで残すことも可能になっており、色褪せることもありません。しかし、裏を返せば悲しみも鮮明に残るように思います。
私は一度、物忘れを起こしにくくする方法に何があるかを考えたことがあります。そこで考えたのは脳内にチップのような物を埋め込み、脳の神経回路とうまくつなげることで忘れにくくできないかと考えました。
倫理的にとか、法律的にとかの議論はさておき、実際忘れにくくはなるでしょう。しかし、大切な物を失った悲しみも忘れにくくなる可能性があり、あまりよろしくないなと切り捨てました。
個人的な結論
とまぁ、簡単に思いを伝える方法を考えてみたのですが、個人的な結論を言ってしまえば、無理です。
亡くなった人に思いを伝えるのは無理でしょう。
どんなに亡き人に思いを伝えようとしても相手に届いたかどうかを知る術はありません。
相手が幽霊で「伝わっているよ」とこちら側に伝えようとしても我々は普通の人間です。幽霊の思いを知ることはできません。
霊媒師を介すれば伝わるかもしれませんが、亡くなった人が伝えたいことを霊媒師がそのまま伝えることは難しいでしょう。逆も然りで、こちら側のすべての思いが亡くなった人に正確に伝わるとは考えにくいですし、そもそも証明ができません。
霊能力を身に付ければ確実に相手と会話ができるかもしれませんが、相当な修行が必要でしょうし、それを習得する前に死んでしまいそうです。死んでしまった先で話をすることが出来るかもしれませんが。
そういえば知っていますか?ポルターガイストなどの幽霊退治にはただ霊能力だけで挑むのではなく、科学的な方法も活用されていることを。
これをうまく活用すれば亡き人に思いを伝えられますし、うまくいけば相手からの返事ももらえます。
しかし、科学が全て正しいとは限りません。ましてや、作ったアルゴリズムが常に正しいとも限りません。
幽霊の発言をビッグデータで解析すればパターンが見えてくるかもしれません。しかし、その発言は亡き人本人が言いたいことだと本当に言い切れるでしょうか?ただパターン化しただけで、幽霊が多く発言しやすい言葉をアルゴリズムが導いているだけかもしれません。
結局、本人同士がちゃんと伝え合わなければ、届かないでしょう。しかし、その方法は今のところ無さそうです。
したがって、個人的な結論は、
亡くなった人に思いを伝えるのは無理
でしょう(あくまで個人的な結論です。私の考えが間違っていることもありますので、あまり真に受けないようにしてください。)。
亡き人に思いを伝えるために
個人的な結論は「亡くなった人に思いを伝えるのは無理」というものでした。
それでも亡き人に思いを伝えたい場合はあるでしょう。その場合、どうすればいいでしょうか。
それは、生前から常々伝えておく。
これしかないのではないでしょうか?
亡くなった人に伝えるなんて、結局無理なんだということを分かってもらったうえで割り切っていただきたいです。
それでもこうするしかないように私は思います。
人はいずれ死にます。
さらにいつ死ぬのかなんて分かりません。
さらに言えば、「言っておかないと」と思った瞬間に亡くなっていたということだってあり得るでしょう。
とすれば、日ごろから伝えるべきことはちゃんと伝えるべきなのではと私は思います。
あなたが、大事だと、大切だと思っている人に。
全てを伝えることはできないでしょう。それでも、「少しでも伝えておけばよかった」という後悔が少なくなればいいなと思います。